ジャガイモの浴光催芽・浴光育芽

じゃがいも 馬鈴薯

ジャガイモ(馬鈴薯)を植え付けるにあたり、多くのホームページ、ブログ、動画サイトなどで浴光催芽(浴光育芽)を行うことが推奨されています。果たしてそれはやったほうが良いことなのでしょうか!?

ジャガイモの浴光催芽の歴史

今年からジャガイモ「男爵」と「とうや」を栽培しようと思い立ち、植え付け段階についていろいろと調べていました。浅植え、マルチ植えなどいろいろとありましたが、先ずは準備段階の「浴光催芽」が気になったのでした。

現在は多くのサイトで、当たり前のように推奨されているのですが、調べてみると相当に古い技術で、実際に読める論文数は極めて少なかったのです(^^;。

その中に日本語で書かれ、多くのサイトで挙げられている浴光催芽の利点を網羅的に記載した報告書を見つけたので、おそらくこれが現在まで繋がっているソースの一つと言って良いかと思っています。発表年の記載がないのですが、たぶん1940年後半~1950年前半に書かれたものかな。

あまりに古いので、漢字とか読みにくいです(笑)。

1)馬鈴薯に関する生理、生態学的研究Ⅳ 浴光催芽に依る早熟増収の機構に就いて
Physiological and ecological studies on potato plant Ⅳ. Investigation on the mechanism of earlier maturity and yield-increase of of potatoes due to the sun-sprouting.
著者 中 潤 三 郎・大 森 浩

この報告書の以前からは、浴光催芽により経験的な増収効果をまとめた1927年のアメリカの報告書などがありました。

2)SOURCE, CHARACTOR, AND TREATMENT OF POTATO SETS.
UNITED STATES DEPARTMENT OF AGRICULTURE WASHINTON D.C. Dec 1927
William StuartW. C. EdmundsonP. M. Lombard and G. W. Dewey

2)の報告書内ではすでに1902年には行われていたとの記載がありますし…いやー、古い古い(笑)

浴光催芽の効果について

2)の報告書では、1902~1920年あたりを中心に、催芽したかしていないかの比較を各地で検証した結果が載っており、一部変わらないとのデータもありますが、総じて増収傾向であることが記載されています。

1)ではより詳細に催芽区と非催芽区で、発芽日、花蕾確認日、開花日、開花終了日、下葉黄変開始日、葉の葉緑体量、呼吸量、草丈、種芋の状態、新薯肥大、貯蔵炭水化物量の評価が記載されており、非常に興味深い報告書です。中でも重要な結果をまとめると以下の通り。

  • 催芽区は発芽日で6日、開花終了日と下葉黄変開始日で3日ほど早かった。
  • 種芋の崩壊は催芽区の方が平均2週間ほど早かった。
  • 草丈は催芽区の方が低い。これによって同化産物の新薯への同化産物の還流を促すと考えられる。
  • 催芽区の方が栽培期間を通じて葉1 g当たりの葉緑素量が多く、これは光合成による同化産物生成が旺盛であることを示す。
  • 新薯の呼吸量が低下するのが催芽区の方が早く、これは早熟=早期収穫可能であることを示す。
  • 総収量は催芽区の方が12 %程度多かった。

重要な点を簡単に表にまとめると以下の通りです。

浴光催芽収量(kg/a)草丈(cm)葉緑素量(mg/生葉1g)新薯澱粉量(mg/生重1g)
処理あり2,27046.60.9086.55
処理なし2,03047.00.8175.10
草丈、葉緑素量、貯蔵澱粉量は対象期間最終日における量です。
参考:馬鈴薯に関する生理、生態学的研究Ⅳ 浴光催芽に依る早熟増収の機構に就いて 著 : 中 潤 三 郎・大 森 浩

うん。良いこと尽くめ(笑)。
なぜこうなるのか分子生理的に記載されている論文が見つからないのですが、自分としてはちょっとしたアイデアがあるので、それは後日「黄化子葉」についての記事のいずれかで書いていきたいと思います(笑)。

で、浴光催芽をやってみました。

催芽開始は2022年2月26日
条件はレジャー用のシート(日焼けで使うやつ)の上で一層に展開。ブログやyoutubeでは見かけなかったですが、全面から反射光あった方が良いですよね(笑)

雨天と気温20 ℃以上の予報が出た際には室内取り込み。夜間は基本的に霜を防ぐカバーを掛けるだけ。ただ、0 ℃を下回る際にはやはり室内取り込み。

催芽終了は種植え前日の2022年3月20日でした。トータルで22日間です。

おおよそ5 mm前後の芽が出てきていました(^^)

どの程度まで芽を出させるのが良いのか、一部論文などを見てみたのですが、何より運搬中に芽が欠けてしまったりが怖くって(^^;

この程度までがなんとなく良い気がしてます。科学者らしくない感想ですけれど(笑)

その後の経過は以下の通りです。

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