キクイモ・菊芋植え付け編 自己・非自己認識?

キクイモ 菊芋

2022年3月21日、キクイモ(白種・紫種)の植え付けを行いました。キクイモは邪魔になるくらい旺盛な繁殖力と成長力を持っているので、いろいろなサイトを見ても、周囲の畑を見ても、適当に栽培されている方も多い気がします。

しかし「たかがキクイモ、されどキクイモ」。興味深い論文を見つけたので、それに沿った植え付けをしてみました。

キクイモとは?

キクイモ・菊芋 Helianthus tuberosus はキク科ヒマワリ属で、1.5~3 mの草丈にもなる大型の草本です。英名はJerusalem artichokeですが、アーティチョークとは異なる属になります。

国内には1850年ころに入り、全国に広まった外来種です。

塊茎が食用となり、含まれる成分としてフルクタン(イヌリン)が良く知られています。

イヌリンはフルクトースが連結した直鎖状構造で、末端にグルコースを持ちますが、ヒト消化管では難消化のため、血糖値上昇抑制、腸内細菌叢の改善、炎症性大腸疾患の改善、脂質吸収抑制やミネラル吸収促進など、多くの作用を持つことが知られています。

例えばPubMed検索で「glucose level Helianthus tuberosus(キクイモの学名)」で検索すると47報の論文(2022年4月12日現在)が表示されます。

健康食品としては、それなりにエビデンスがありますし、いくつか拾い読みしても、それなりの科学的バックボーンに支えられて検証されていました。

そんなキクイモですが、よく知られた2種(白色種と紫色種)があります。以下の写真のように、紫色種は塊根の表皮に紫色が乗ります。

白色種
紫色種

では、白色種と紫色種に違いはあるのでしょうか?

以下の論文の通り、実際には紫色種の方がイヌリン含量、ポリフェノール含量が白色種に比べて優位に高いことが知られています。このため、健康食品として考えるのなら紫色種がより良いと言えるかもしれません。

論文 : 品種、収穫時期の違いがキクイモの成分および抗酸化活性に及ぼす影響
安田みどり、斎木まど香、児島百合子
上記論文タイトルで検索できます。

簡単にデータを表にしてみました。

イヌリン含量
(g/dry100g)
総ポリフェノール含量
(mg/dry 100g)
DPPHラジカル補足活性
(μmol TE/dry g)
白色種(実)50.1±1.864±31.8±0.2
紫色種(実)56.0±2.4127±22.6±0.2
いずれもP<0.01で有意。
引用 : 品種、収穫時期の違いがキクイモの成分および抗酸化活性に及ぼす影響 安田みどり、斎木まど香、児島百合子
イヌリン含量
(g/dry100g)
総ポリフェノール含量
(mg/dry 100g)
DPPHラジカル補足活性
(μmol TE/dry g)
白色種(皮)51.4±1.4371±4215.0±1.5
紫色種(皮)54.8±2.2549±637.5±0.3
イヌリン含量P<0.05、その他P<0.01で有意。
引用 : 品種、収穫時期の違いがキクイモの成分および抗酸化活性に及ぼす影響 安田みどり、斎木まど香、児島百合子

ただ発芽までの時間や、後日記載したい某比較試験を観ますと、白色種の方が育てやすそうです。実際に食べてみた際の味や食感も、白色種の方が個人的には優れていると思います(笑)。

まぁ「良薬口に苦し」なのかもですけれどね(笑)

キクイモの植え付け

さて、本題の植え付けについてです。いろいろなサイトや周りの畑を見ますと、他の作物に比べ漫然と植えられていると感じます。(が、皆さんいかがでしょうか!?(笑))

気にしながら見渡してみますと、「この後収穫してる?」という適当な畑もいたるところで散見されます。

そんなキクイモですが、まじめに調べると、興味深い作物であることがわかるんですよ。今日のブログテーマでもありますが、一つ例を挙げまてみましょう。

近年植物体自体に自他識別能があることが知られてきていまして、それを応用することで、キクイモでは収量が増加するという論文があったのです。

Genotype-aggregated planting improves yield in Jerusalem artichoke (Helianthus tuberosus) due to self/non-self discrimination
Yuya Fukano, Wei Guo, Koji Noshita, Shoko Hashida, Shotaka Kamikawa
Evolutionary Applications 508-518, 12, 3, March 2019,

植物の自他認識として古くから知られているのは、受粉における「自家不和合性」ですね。これについては生理学的にも・タンパク質機能学的にも細かく調べられていますね。

ヒトでは自分と他者を分子レベルで見分けるのにHLAの型などが有名です。

植物の自家不和合性を達成するために使われる花粉とめしべの各タンパク質のセットはSハプロタイプと呼ばれていまして、このセットは植物種によって違っていたりします。

繁殖において自己/非自己を認識することで、遺伝子の多様性と環境適応性を担保しようとしているのは、もちろん種を残していくためには重要な選択圧力です。

ただ、植物体自体の自己/非自己認識については、まだわからないことが多いようで(^^;。

しかし!狭い畑ですし、できるなら最大限の収穫を目指したい!との思いで、以下のように植え付けました。

実際の結果は収穫時にまとめ、有意差があるのかどうか確認したいと思います!

が…実はここで大きな問題があるんです…。論文ではそのあたりはきちんとしていて、栃木・千葉・群馬から種芋を入手し、同じクローンでは無いことを精一杯保証しようとしています。

一方で自分の場合は白種も紫種もそれぞれ同じ生産者のものを利用しているため、違うクローンであることが担保されていないのです( ノД`)。まぁ、栽培の過程で、それぞれに現れる細かい形態上の違いなどから判断しないとですね(^^;

コメント

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